2012年6月8日金曜日

Libertango

今から15年ほど前、名古屋に転勤になった友人を訪ねた。彼とはギター部で一緒させていただたいた仲である。自称レコードのコレクターでかなりの数のものを集めたと言っていた。酒を飲みながらお気に入りのコレクションを聴かせていただき、今となってはアナログからデジタルへの変換は目新しくもないが、単身赴任の殺風景な部屋の中で何枚かのCDを焼いてもらった。その中にはピアソラのものは無かったが彼はその当時ブラジルを始め南米の音楽にとても注目していた。最近北欧の車のCMにリベルタンゴが使われているのに気がついた。この曲、今までに何回か使われてきたがYO YO MA の演奏も聴きたくなったので購入することにした。YOU TUBE で手軽に聴けるのだがもっと上質な音で聴いてみたかった。MA氏のことはコンクールを総なめにしていた若い頃から演奏は注目していたのだが残念ながらLibertangoは持っていなくて是非手に入れたいと思っていた。
  アストル・ピアソラ(Astor Piazzolla/1921-1992)は、アルゼンチンの作曲家、バンドネオン演奏家なのだが、タンゴを元にクラシック、ジャズの要素を融合させた独自の演奏形態を産み出したと言われている。ピアソラは、バロックやフーガといったクラシックの構造や、ニューヨークジャズのエッセンスを取り入れることで、強いビートと重厚な音楽を自由に展開させていて、私にとってこの曲は都会的な雰囲気を醸しながらも疾風のごとく焦燥感に駆られ走り続けるある種青年期の悲壮感さえ感じるのである。表題のリベルタンゴだけでなく組曲という形で入っている。南米の作曲家の作品には優れたものが数多くあるがクラシックの現代史の中で埋没されてしまっているものも少なくないように思う。もっと聴かれて親しまれても良いのではないだろうか。

0 件のコメント: